大好きなピアノとJ-POPで人気YouTuberに!ストリートピアニスト・みやけんの軌跡 エンタメ・バラエティ By - GLUGLU編集部 更新:2021-06-14 Share Post LINE はてな 『ストリートピアノ』という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。 『ストリートピアノ』とは、商業施設や駅などの公共施設に設置された、誰でも弾くことができるピアノのこと。 東京では東京都庁の展望室に設置してあるグランドピアノが有名です。最近ではストリートピアノを演奏し動画を公開するYouTuberも増えており、注目されています。 そんな中、プロのトロンボーン奏者でありながら、ストリートピアノでSNSを中心に爆発的な人気を博しているYouTuberがいます。 鹿児島県出身の“みやけん”こと、宮原健輔(30)さんです。 ※プロのトロンボーン奏者として活躍する、みやけん みやけんさんは、東京都交響楽団や東京フィルハーモニー交響楽団など、数々のオーケストラにエキストラ出演しているプロのトロンボーン奏者。 一方で、全国各地のストリートピアノを行脚し、主にJ-POP楽曲をアレンジして披露しています。 耳コピのレパートリーは1000曲以上!その素晴らしい演奏テクニックは人々を魅了し、瞬く間にファンを増やしました。 また音楽ユニット『YOASOBI』の大ヒット曲『夜に駆ける』を演奏したことから、『YOASOBI』の公式Twitterアカウントでも紹介され、いまやYouTube登録者数は10万人となっています。 今回は、人気ストリートピアノYouTuber・みやけんさんに、これまでの軌跡について伺いました。 幼少期から開花させていたピアノの才能 ピアノ調律師の父と専業主婦の母のもとに生まれたみやけんさん。実家にアップライトピアノはあったものの、幼少期にピアノを学んでいたわけではないといいます。 しかし当時から、親が聴いていたJ-POP楽曲の音を鍵盤で探して弾くのが好きだったとか。天性の才能は幼少期から現れていました。 ――教わっていないのに、幼稚園児の頃からピアノを弾いていた? みやけんさん: 幼稚園の歌の時間も、一番前に立ってずっと先生のピアノを見ていました。 ある時、担任がお休みで別の先生がピアノを弾いたそうです。その先生が園児からのリクエスト曲に対応できなったみたいで。 ほかの園児が「けんちゃんなら弾けるよ」といって、僕が弾いたらしい。後から親にお礼の電話があったみたい。 小学1年生の時も入学式で初めて校歌を聴いて、家に帰って耳コピで弾いていました。休み時間は、当時流行っていたJ-POPを耳コピで弾いて遊んでいました。 当時は『モーニング娘。』や『SPEED』が流行っていたので、自分でアレンジして弾いていましたね。 ――すごい才能! みやけんさん: 当時からピアノが好きで、『習う』というよりは『楽しむ』というところから入っていきました。 小学校でトロンボーンに出会いプロの道へ 小学生になり、ピアノの個人レッスンに通うようになったみやけんさん。ここでさらにJ-POPをたくさん弾くようなります。 また小学4年生で金管バンドに加入し、先生からいわれるがままトロンボーンの担当に。中学でも吹奏楽部でトロンボーンを続け、鹿児島県内の音楽高校にトロンボーン専攻で進学しました。 その後、トロンボーン専攻で愛知県立芸術大学に進学。在学時からオーケストラのオーディションに合格するなど、トロンボーンの才能も開花させます。 この頃から「就職先はオーケストラ」と考えるように。一方で、流行りの曲をピアノで弾くことも続けていました。この大学時代に、ひっそりとYouTubeチャンネルを立ち上げたみやけんさん。 当時は電子ピアノで吹奏楽の楽曲を演奏する程度でしたが、後にストリートピアノによって大人気チャンネルに成長することになるのです。 そして大学卒業後、上京したみやけんさんはオーケストラのオーディションを受け、徐々に演奏に呼ばれるようになります。 ――プロのオーケストラに参加するのはハードルが高い? みやけんさん: うまく成果を発揮できれば次も呼ばれますが、ちょっとしたミスが命取り。厳しい世界ですね。 そして完全に口コミの世界です。参加したオーケストラの人が「みやけん、よかったよ」といってくれたり、「いいね」と思ってくださって、次も呼んでくれたり。 逆に一緒に吹いていて音が微妙だったとか、本番で間違えれば、次から呼ばれなくなる。 先方の反応が「また次もよろしく!」だと安心します。逆に「ありがとうございます」といわれ、それ以降連絡がないと心配になります。 ――かなり限られた枠なのでは? みやけんさん: オーケストラの世界はすごく狭い。都内のプロのオケも数えるくらいしかありません。 その中でトロンボーン奏者は2~3名だけ。募集も1名。その1名に対して50~100名がオーディションを受けるので、結構大変です。 30歳になってもプロのオーケストラに呼ばれたことがない奏者もたくさんいます。 厳しいオーケストラの世界でも、みやけんさんはフリーランスのエキストラとして地位を確立。 東京都交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、読売日本交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団など、さまざまなオーケストラに定期的に呼ばれるようになります。 「なんだこの世界は!」ストリートピアノで味わった感動体験 出典:みやけん / Miyaken 動画はこちら プロのトロンボーン奏者として活躍していたみやけんさんですが、ピアノでのJ-POP演奏は続けていました。 そんな中、ストリートピアノに出会います。 ――ストリートピアノにハマったきっかけは? みやけんさん: 新型コロナウイルス感染症が流行る前の2019年11月に、オケの仕事で京都に行きました。 京都駅の改札の目の前に大きなグランドピアノが置いてあって、弾いている人がいました。周りにすごく人が集まっていて、「あ、YouTubeでよく見る光景だ!こういうの、本当にあるんだ!」と。 僕はその時は弾きませんでしたが、翌日次の仕事場へ移動する前に弾きに行くことにしました。 翌朝京都駅に向かい、特に何も準備していなかったので、当時流行っていた『Official髭男dism』の『Pretender』や米津玄師さんの『Lemon』を弾きました。 そうしたら、ありえないくらい人が集まった!関西の人たちはすごく温かくて、「ブラボー!アンコール!」って大歓声! 「なんだこの世界は!YouTubeみたいなことって本当に起きるんだ!本当にこんなに盛り上がるんだ!」って感動して。この盛り上がりと拍手で、「ストリートピアノっていいな」と思いました。 ここからハマりましたね。 ――かなり印象的な感動体験ですね。 みやけんさん: はい。すぐに京都駅のビックカメラで三脚を買って動画を撮り、大学時代に作ったYouTubeチャンネルに投稿しました。 この時は音質も悪かったけど、登録者数が伸びたんです。 それからストリートピアノを巡るのが楽しくなって、オケの仕事で遠征する際は『○○県・ストリートピアノ』と検索して、弾いてまわるようになりました。 ――トロンボーンとストリートピアノの違いは? みやけんさん: 僕にとって、単純に音を楽しむことができる楽器はピアノ。自分の魅力や、やりたいことを発揮しやすい。 トロンボーンは仕事というイメージが強いです。感覚だけでなく、しっかりやらなければならない。 オケはほかの楽器のいろんな音を聴いて合わせながらやるので、協調性がないとできない。自分を完全に出しきるよりは、周りと合わせる感じが強いんです。 トロンボーンではクラシック曲しかやらないのに対して、ピアノでは絶対クラシックはやらず、「J-POPをやる!」と決めています。もともとJ-POP を聴いている方が好きなので。 ――その後もさまざまな場所のピアノを弾いて回った? みやけんさん: はい。弾いては動画を撮っていました。 そのうち、現場で出会う人達にYouTubeのアカウントを聞かれ、人の縁やネットワークが広がっていきました。 ――2019年11月に京都駅で初めてストリートピアノを弾き、翌12月には東京都庁でも弾いています。 出典:みやけん / Miyaken 動画はこちら みやけんさん: はい。2019年のクリスマスに都庁で初めて弾きました。 いろいろなストリートピアノを弾いてきましたが、都庁はハードルが高いというか、「気軽には行けない」と勝手に思っていて。『ストリートピアノの聖地』なので。 都庁は距離感や聴いている人の数が駅とは全然違うんです。「あの展望室で弾くなら、ちゃんと弾かないとダメだ!」と思って、「1曲ちゃんと仕上げてから持っていかないと」と思っていました。 今まで即興で楽しんで弾いていましたが、この時は練習してから行きました。楽曲は『Official髭男dism』。『Pretender』はほかの方もよく弾くので、『イエスタデイ』にしました。有名な曲なのに弾いている人がいなかったので。 都庁での演奏は、ストリートピアノでは感じたことがないくらい緊張して、足も震えました。ここは特別な場所です。 そして、京都駅と東京都庁。 この2つの体験が今のみやけんさんに続いているといいます。 ついにYOASOBI公認!再生回数ミリオン突破で人気YouTuberへ 2019年末からストリートピアノに目覚めたみやけんさん。 2020年に入りコロナが爆発的に広がると、本業であるトロンボーンの仕事に陰りが見え始めました。 みやけんさん: 3月の緊急事態宣言頃から、4・5月の公演がなくなりました。 3月から10月までプロの公演の仕事はありませんでした。オケによっては、楽団の人でさえ「9月まで仕事がない」といっている人もいました。 本業の仕事がなくなっただけでなく、人が集まるストリートピアノも自粛しなければならなくなったみやけんさん。 自粛中はYouTubeでピアノ演奏の生配信を決行しました。 みやけんさん: 「YouTubeで視聴者からリクエストをもらって、生配信したらいいのでは?」と思い、6月頃まで生配信をしていました。 目の前の拍手はないけど、web上でリアルな反応をしてくれたり、配信で聴いてくれる人がいることに幸せを感じました。 ――緊急事態宣言が明け、再びストリートピアノが再開できるように。 みやけんさん: 緊急事態宣言解除後も、不特定多数が集まり、密になるストリートピアノをいつ再開するかを迷っていました。 ただ、楽器メーカのヤマハ株式会社が、『LovePiano』というストリートピアノを全国に設置しているんですね。1号機から5号機まで5台あります。 そのヤマハが緊急事態宣言解除後の6月19日に、商業施設『有明ガーデン』のオープンに合わせて、『LovePiano5号機を初お披露目します』と告知したんです。 ヤマハが設置してくれるんだったら、そろそろ弾いて動画を出してもいいかなと思い、再開しました。弾くんだったら「絶対最初に弾きたい!」と思って1番に弾けるように行きました。 ――ここでの演奏が、みやけんさんを人気YouTuberに押し上げるターニングポイントに。 出典:みやけん / Miyaken 動画はこちら みやけんさん: はい。この演奏も特別でした。有明で弾いたYOASOBIさんの『夜に駆ける』を、YOASOBIさんが公式Twitterアカウントで紹介してくださり、公認をいただきました。 この時初めて、動画再生数がミリオンを達成したんです。YOASOBIさんのMVを見ていた人達や、J-POPを聴くのが好きな人達がストリートピアノを知って、僕の動画を見たり、現地に聴きに来てくれるようになりました。 ――その後どんどん登録者数が増えました。 みやけんさん: 6月時点で3000人だったのが、8月には1万人。毎日100人ずつ登録者数が増えていく状態でした。 動画を投稿しなくても『夜に駆ける』のパワーが強くて、自動的に増えていきました。 今はどんな投稿をしても1万再生を突破します。当初は視聴者やお客さんも「この曲が好きだから聴く」という感じでしたが、今は「この人が弾くから聴く」にチェンジしている気がします。 2021年2月には登録者数が6万人近くなり、今は10万人に達しました。 ※登録者数は2021年6月現在です。 ――ストリートピアノYouTuberとして認められてからの反響は? みやけんさん: 今までトロンボーンをやっていても、外で声をかけられることはありませんでした。でもストリートピアノだと必ず声をかけられます。 身近だからこそ、演奏後に「よかったです!」「今の曲なんですか?」と声をかけてもらえる。 「写真いいですか?サインいいですか?」と、ちょっとアイドルみたいな世界ですが、より生で、距離感を近くに感じられるのがすごくいい。 ――今後はストリートピアノをメインに? みやけんさん: 有明で弾いた去年の6月頃は、本業はトロンボーン奏者で、YouTubeやストリートピアノは趣味だと思っていました。 好きだから毎週弾いていたけど、だんだんYouTubeが『稼げるもの』になってきて、今は完全にトロンボーン奏者時代より収入が上回っています。 YouTubeをメインとした案件や企画などのオファーも増えました。『やりたいこと』をやらせてもらっているのでありがたい。いろいろ経験してシフトチェンジできたことはよかったです。 ただ、“トロンボーン奏者・宮原健輔”としても、“YouTuber・みやけん”としても両立させたいです。 「全部の役が自分」 YouTuber・みやけんとして意識していること ――YouTuberとしてのこだわりは? みやけんさん: 動画配信を始めた頃は、プロの演奏家から『YouTube?』ってちょっと馬鹿にされることもありました。YouTubeで『プロ、アマ・素人』の垣根がなくなっているのに、そこにばかりこだわっている人もいます。 でも、「今はこういう時代だから、外で弾けない中でSNSで活動していいね」っていってくれる人もいました。変な表現になりますが、コロナ禍にすごくマッチしたと思います。 僕は今できることを発信するしかない。YouTubeは全部の役が自分。撮影も編集も演奏も全部自分。弾くのは数分だけど、編集はすごく時間がかかっています。 撮ったものをその場でポンと配信するのもいいけど、それだと再生率が伸びない。「どう伸ばすか」、そして企画は常に考えています。 例えば演奏でミスをしても、これまでは「ミスは動画に出せない」と思っていましたが、そのミスをあえて笑いに変えて動画にしたり。 ――総合プロデューサーですね! みやけんさん: いろんなYouTuberの方から学ばせていただいています。 サムネイル1つにしても、クリックしたいと思わせるタイトル付けなど、意識しています。 出典:みやけん / Miyaken 動画はこちら ――最後に、ストリートピアノの魅力は? みやけんさん: ストリートピアノは、一瞬で、身近でいい演奏が聴けます。 オケの時の自分は、燕尾服やタキシードなどきれいな格好をして舞台上にいる。客席とほどよく距離があり、厳粛な感じで音楽を聴いてもらいます。 ストリートピアノは真逆。普段着で、すぐ近くに鍵盤を見ているお客さんがいる。見ている人はより身近に音楽を感じられる。「こんな世界があるんだ!」と感動しました。 自分が想像する『楽しめる音楽の世界』に近いです。気軽に楽しめるのが一番いい。すごく楽しいです。 幼少期からずっと続けてきた大好きなピアノとJ-POP。 ストリートピアノを始めたことで、『好きなこと』で人々を感動させ、さらに新しい仕事にもつながっています。みやけんさんのますますの活躍に今後も目が離せません! みやけんさんの演奏を生で見たい方はこちら!アメリカ出身のピアニスト・ジェイコブ・コーラー氏のコンサートにみやけんさんがゲスト出演します。 「Street Piano Concert 2021」 日時:2021年7月23日(金・祝)14:00開演(開場13:00) 場所:横浜・関内ホール 大ホール [文/コティマム・構成/grape編集部] チャンネル情報 みやけん / Miyaken チャンネル登録者数:27万2000人 再生回数: 1億2935万1567回 関連ワード ピアノ この記事をシェアする Share Post LINE
『ストリートピアノ』という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
『ストリートピアノ』とは、商業施設や駅などの公共施設に設置された、誰でも弾くことができるピアノのこと。
東京では東京都庁の展望室に設置してあるグランドピアノが有名です。最近ではストリートピアノを演奏し動画を公開するYouTuberも増えており、注目されています。
そんな中、プロのトロンボーン奏者でありながら、ストリートピアノでSNSを中心に爆発的な人気を博しているYouTuberがいます。
鹿児島県出身の“みやけん”こと、宮原健輔(30)さんです。
※プロのトロンボーン奏者として活躍する、みやけん
みやけんさんは、東京都交響楽団や東京フィルハーモニー交響楽団など、数々のオーケストラにエキストラ出演しているプロのトロンボーン奏者。
一方で、全国各地のストリートピアノを行脚し、主にJ-POP楽曲をアレンジして披露しています。
耳コピのレパートリーは1000曲以上!その素晴らしい演奏テクニックは人々を魅了し、瞬く間にファンを増やしました。
また音楽ユニット『YOASOBI』の大ヒット曲『夜に駆ける』を演奏したことから、『YOASOBI』の公式Twitterアカウントでも紹介され、いまやYouTube登録者数は10万人となっています。
今回は、人気ストリートピアノYouTuber・みやけんさんに、これまでの軌跡について伺いました。
幼少期から開花させていたピアノの才能
ピアノ調律師の父と専業主婦の母のもとに生まれたみやけんさん。実家にアップライトピアノはあったものの、幼少期にピアノを学んでいたわけではないといいます。
しかし当時から、親が聴いていたJ-POP楽曲の音を鍵盤で探して弾くのが好きだったとか。天性の才能は幼少期から現れていました。
――教わっていないのに、幼稚園児の頃からピアノを弾いていた?
みやけんさん:
幼稚園の歌の時間も、一番前に立ってずっと先生のピアノを見ていました。
ある時、担任がお休みで別の先生がピアノを弾いたそうです。その先生が園児からのリクエスト曲に対応できなったみたいで。
ほかの園児が「けんちゃんなら弾けるよ」といって、僕が弾いたらしい。後から親にお礼の電話があったみたい。
小学1年生の時も入学式で初めて校歌を聴いて、家に帰って耳コピで弾いていました。休み時間は、当時流行っていたJ-POPを耳コピで弾いて遊んでいました。
当時は『モーニング娘。』や『SPEED』が流行っていたので、自分でアレンジして弾いていましたね。
――すごい才能!
みやけんさん:
当時からピアノが好きで、『習う』というよりは『楽しむ』というところから入っていきました。
小学校でトロンボーンに出会いプロの道へ
小学生になり、ピアノの個人レッスンに通うようになったみやけんさん。ここでさらにJ-POPをたくさん弾くようなります。
また小学4年生で金管バンドに加入し、先生からいわれるがままトロンボーンの担当に。中学でも吹奏楽部でトロンボーンを続け、鹿児島県内の音楽高校にトロンボーン専攻で進学しました。
その後、トロンボーン専攻で愛知県立芸術大学に進学。在学時からオーケストラのオーディションに合格するなど、トロンボーンの才能も開花させます。
この頃から「就職先はオーケストラ」と考えるように。一方で、流行りの曲をピアノで弾くことも続けていました。この大学時代に、ひっそりとYouTubeチャンネルを立ち上げたみやけんさん。
当時は電子ピアノで吹奏楽の楽曲を演奏する程度でしたが、後にストリートピアノによって大人気チャンネルに成長することになるのです。
そして大学卒業後、上京したみやけんさんはオーケストラのオーディションを受け、徐々に演奏に呼ばれるようになります。
――プロのオーケストラに参加するのはハードルが高い?
みやけんさん:
うまく成果を発揮できれば次も呼ばれますが、ちょっとしたミスが命取り。厳しい世界ですね。
そして完全に口コミの世界です。参加したオーケストラの人が「みやけん、よかったよ」といってくれたり、「いいね」と思ってくださって、次も呼んでくれたり。
逆に一緒に吹いていて音が微妙だったとか、本番で間違えれば、次から呼ばれなくなる。
先方の反応が「また次もよろしく!」だと安心します。逆に「ありがとうございます」といわれ、それ以降連絡がないと心配になります。
――かなり限られた枠なのでは?
みやけんさん:
オーケストラの世界はすごく狭い。都内のプロのオケも数えるくらいしかありません。
その中でトロンボーン奏者は2~3名だけ。募集も1名。その1名に対して50~100名がオーディションを受けるので、結構大変です。
30歳になってもプロのオーケストラに呼ばれたことがない奏者もたくさんいます。
厳しいオーケストラの世界でも、みやけんさんはフリーランスのエキストラとして地位を確立。
東京都交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、読売日本交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団など、さまざまなオーケストラに定期的に呼ばれるようになります。
「なんだこの世界は!」ストリートピアノで味わった感動体験
出典:みやけん / Miyaken 動画はこちら
プロのトロンボーン奏者として活躍していたみやけんさんですが、ピアノでのJ-POP演奏は続けていました。
そんな中、ストリートピアノに出会います。
――ストリートピアノにハマったきっかけは?
みやけんさん:
新型コロナウイルス感染症が流行る前の2019年11月に、オケの仕事で京都に行きました。
京都駅の改札の目の前に大きなグランドピアノが置いてあって、弾いている人がいました。周りにすごく人が集まっていて、「あ、YouTubeでよく見る光景だ!こういうの、本当にあるんだ!」と。
僕はその時は弾きませんでしたが、翌日次の仕事場へ移動する前に弾きに行くことにしました。
翌朝京都駅に向かい、特に何も準備していなかったので、当時流行っていた『Official髭男dism』の『Pretender』や米津玄師さんの『Lemon』を弾きました。
そうしたら、ありえないくらい人が集まった!関西の人たちはすごく温かくて、「ブラボー!アンコール!」って大歓声!
「なんだこの世界は!YouTubeみたいなことって本当に起きるんだ!本当にこんなに盛り上がるんだ!」って感動して。この盛り上がりと拍手で、「ストリートピアノっていいな」と思いました。
ここからハマりましたね。
――かなり印象的な感動体験ですね。
みやけんさん:
はい。すぐに京都駅のビックカメラで三脚を買って動画を撮り、大学時代に作ったYouTubeチャンネルに投稿しました。
この時は音質も悪かったけど、登録者数が伸びたんです。
それからストリートピアノを巡るのが楽しくなって、オケの仕事で遠征する際は『○○県・ストリートピアノ』と検索して、弾いてまわるようになりました。
――トロンボーンとストリートピアノの違いは?
みやけんさん:
僕にとって、単純に音を楽しむことができる楽器はピアノ。自分の魅力や、やりたいことを発揮しやすい。
トロンボーンは仕事というイメージが強いです。感覚だけでなく、しっかりやらなければならない。
オケはほかの楽器のいろんな音を聴いて合わせながらやるので、協調性がないとできない。自分を完全に出しきるよりは、周りと合わせる感じが強いんです。
トロンボーンではクラシック曲しかやらないのに対して、ピアノでは絶対クラシックはやらず、「J-POPをやる!」と決めています。もともとJ-POP を聴いている方が好きなので。
――その後もさまざまな場所のピアノを弾いて回った?
みやけんさん:
はい。弾いては動画を撮っていました。
そのうち、現場で出会う人達にYouTubeのアカウントを聞かれ、人の縁やネットワークが広がっていきました。
――2019年11月に京都駅で初めてストリートピアノを弾き、翌12月には東京都庁でも弾いています。
出典:みやけん / Miyaken 動画はこちら
みやけんさん:
はい。2019年のクリスマスに都庁で初めて弾きました。
いろいろなストリートピアノを弾いてきましたが、都庁はハードルが高いというか、「気軽には行けない」と勝手に思っていて。『ストリートピアノの聖地』なので。
都庁は距離感や聴いている人の数が駅とは全然違うんです。「あの展望室で弾くなら、ちゃんと弾かないとダメだ!」と思って、「1曲ちゃんと仕上げてから持っていかないと」と思っていました。
今まで即興で楽しんで弾いていましたが、この時は練習してから行きました。楽曲は『Official髭男dism』。『Pretender』はほかの方もよく弾くので、『イエスタデイ』にしました。有名な曲なのに弾いている人がいなかったので。
都庁での演奏は、ストリートピアノでは感じたことがないくらい緊張して、足も震えました。ここは特別な場所です。
そして、京都駅と東京都庁。
この2つの体験が今のみやけんさんに続いているといいます。
ついにYOASOBI公認!再生回数ミリオン突破で人気YouTuberへ
2019年末からストリートピアノに目覚めたみやけんさん。
2020年に入りコロナが爆発的に広がると、本業であるトロンボーンの仕事に陰りが見え始めました。
みやけんさん:
3月の緊急事態宣言頃から、4・5月の公演がなくなりました。
3月から10月までプロの公演の仕事はありませんでした。オケによっては、楽団の人でさえ「9月まで仕事がない」といっている人もいました。
本業の仕事がなくなっただけでなく、人が集まるストリートピアノも自粛しなければならなくなったみやけんさん。
自粛中はYouTubeでピアノ演奏の生配信を決行しました。
みやけんさん:
「YouTubeで視聴者からリクエストをもらって、生配信したらいいのでは?」と思い、6月頃まで生配信をしていました。
目の前の拍手はないけど、web上でリアルな反応をしてくれたり、配信で聴いてくれる人がいることに幸せを感じました。
――緊急事態宣言が明け、再びストリートピアノが再開できるように。
みやけんさん:
緊急事態宣言解除後も、不特定多数が集まり、密になるストリートピアノをいつ再開するかを迷っていました。
ただ、楽器メーカのヤマハ株式会社が、『LovePiano』というストリートピアノを全国に設置しているんですね。1号機から5号機まで5台あります。
そのヤマハが緊急事態宣言解除後の6月19日に、商業施設『有明ガーデン』のオープンに合わせて、『LovePiano5号機を初お披露目します』と告知したんです。
ヤマハが設置してくれるんだったら、そろそろ弾いて動画を出してもいいかなと思い、再開しました。弾くんだったら「絶対最初に弾きたい!」と思って1番に弾けるように行きました。
――ここでの演奏が、みやけんさんを人気YouTuberに押し上げるターニングポイントに。
出典:みやけん / Miyaken 動画はこちら
みやけんさん:
はい。この演奏も特別でした。有明で弾いたYOASOBIさんの『夜に駆ける』を、YOASOBIさんが公式Twitterアカウントで紹介してくださり、公認をいただきました。
この時初めて、動画再生数がミリオンを達成したんです。YOASOBIさんのMVを見ていた人達や、J-POPを聴くのが好きな人達がストリートピアノを知って、僕の動画を見たり、現地に聴きに来てくれるようになりました。
――その後どんどん登録者数が増えました。
みやけんさん:
6月時点で3000人だったのが、8月には1万人。毎日100人ずつ登録者数が増えていく状態でした。
動画を投稿しなくても『夜に駆ける』のパワーが強くて、自動的に増えていきました。
今はどんな投稿をしても1万再生を突破します。当初は視聴者やお客さんも「この曲が好きだから聴く」という感じでしたが、今は「この人が弾くから聴く」にチェンジしている気がします。
2021年2月には登録者数が6万人近くなり、今は10万人に達しました。
※登録者数は2021年6月現在です。
――ストリートピアノYouTuberとして認められてからの反響は?
みやけんさん:
今までトロンボーンをやっていても、外で声をかけられることはありませんでした。でもストリートピアノだと必ず声をかけられます。
身近だからこそ、演奏後に「よかったです!」「今の曲なんですか?」と声をかけてもらえる。
「写真いいですか?サインいいですか?」と、ちょっとアイドルみたいな世界ですが、より生で、距離感を近くに感じられるのがすごくいい。
――今後はストリートピアノをメインに?
みやけんさん:
有明で弾いた去年の6月頃は、本業はトロンボーン奏者で、YouTubeやストリートピアノは趣味だと思っていました。
好きだから毎週弾いていたけど、だんだんYouTubeが『稼げるもの』になってきて、今は完全にトロンボーン奏者時代より収入が上回っています。
YouTubeをメインとした案件や企画などのオファーも増えました。『やりたいこと』をやらせてもらっているのでありがたい。いろいろ経験してシフトチェンジできたことはよかったです。
ただ、“トロンボーン奏者・宮原健輔”としても、“YouTuber・みやけん”としても両立させたいです。
「全部の役が自分」 YouTuber・みやけんとして意識していること
――YouTuberとしてのこだわりは?
みやけんさん:
動画配信を始めた頃は、プロの演奏家から『YouTube?』ってちょっと馬鹿にされることもありました。YouTubeで『プロ、アマ・素人』の垣根がなくなっているのに、そこにばかりこだわっている人もいます。
でも、「今はこういう時代だから、外で弾けない中でSNSで活動していいね」っていってくれる人もいました。変な表現になりますが、コロナ禍にすごくマッチしたと思います。
僕は今できることを発信するしかない。YouTubeは全部の役が自分。撮影も編集も演奏も全部自分。弾くのは数分だけど、編集はすごく時間がかかっています。
撮ったものをその場でポンと配信するのもいいけど、それだと再生率が伸びない。「どう伸ばすか」、そして企画は常に考えています。
例えば演奏でミスをしても、これまでは「ミスは動画に出せない」と思っていましたが、そのミスをあえて笑いに変えて動画にしたり。
――総合プロデューサーですね!
みやけんさん:
いろんなYouTuberの方から学ばせていただいています。
サムネイル1つにしても、クリックしたいと思わせるタイトル付けなど、意識しています。
出典:みやけん / Miyaken 動画はこちら
――最後に、ストリートピアノの魅力は?
みやけんさん:
ストリートピアノは、一瞬で、身近でいい演奏が聴けます。
オケの時の自分は、燕尾服やタキシードなどきれいな格好をして舞台上にいる。客席とほどよく距離があり、厳粛な感じで音楽を聴いてもらいます。
ストリートピアノは真逆。普段着で、すぐ近くに鍵盤を見ているお客さんがいる。見ている人はより身近に音楽を感じられる。「こんな世界があるんだ!」と感動しました。
自分が想像する『楽しめる音楽の世界』に近いです。気軽に楽しめるのが一番いい。すごく楽しいです。
幼少期からずっと続けてきた大好きなピアノとJ-POP。
ストリートピアノを始めたことで、『好きなこと』で人々を感動させ、さらに新しい仕事にもつながっています。みやけんさんのますますの活躍に今後も目が離せません!
みやけんさんの演奏を生で見たい方はこちら!アメリカ出身のピアニスト・ジェイコブ・コーラー氏のコンサートにみやけんさんがゲスト出演します。
「Street Piano Concert 2021」
日時:2021年7月23日(金・祝)14:00開演(開場13:00)
場所:横浜・関内ホール 大ホール
[文/コティマム・構成/grape編集部]