YouTubeで『BAN』されるのはどんな動画? 種類や理由をまとめてみた

教養・ビジネス By - GLUGLU編集部 更新:

「あのチャンネル、アカウントBANされたみたいだね」「実は誤BANだったらしいよ」という会話が日常でされるほど、身近な言葉になっている『BAN(バン)』。

BANは『禁止』などを意味する英語で、日本では俗にチャンネル・アカウントの停止や動画の削除を表すことが多いとされています。

・どんな種類の動画がBANされているのか。

・どのくらいの数の動画がBANされているのか。

・そもそもBANはどうしてされるのか。

こういった内容を、公開されている『Google 透明性レポート』のデータや、YouTubeの担当者から聞いた話をもとにまとめました。

早速、見ていきましょう。

YouTubeで削除される数が多いのは、どんな種類の動画?

出典:Google 透明性レポート 2022年1~3月の統計

2022年1~3月に削除された、YouTubeの動画の総数は388万2684。

削除理由でもっとも多いのは『児童の安全(24.9%)』でした。

ほか『暴力的または生々しい描写(21.2%)』『ヌードや性的表現(16.9%)』『有害で危険な行為(12.4%)』が続きます。

YouTubeのコミュニティガイドラインに沿って、違反動画が検出され、削除されます。

そこで気になったのが、最近、視覚や聴覚を刺激することで心地よさを届ける『ASMR』という種類のバーチャルクリエイターによる動画のBANが、日本で話題になっていたことです。

ASMR関連の動画に何があったのか、YouTubeの担当者に話を聞いてみました。

ASMRが違反対象というわけではない

「ASMRはBANされる」「規約が変わって対象になった」という声もネットにありますが、これは間違いです。

バーチャルクリエイターはアバターであり、実在しているわけではありませんが、バーチャルクリエイターも実在の人と同じとみなしたうえで、もし、そのバーチャルクリエイターが未成年のような設定だった場合、咀嚼音(そしゃくおん)や不適切に性的欲求を満たすようなコンテンツを制作するのは、『子どもの安全に関するポリシー』の違反になるということです。

子供たちとそのプライバシーを守ることを最優先事項にしているYouTube。もちろん、それ以外にもコミュニティを守る働きかけをしています。

例えば、2019年に、ヘイトスピーチとハラスメントに関する大幅なガイドラインの更新をしました。

2021年には、ワクチンに対して医学的に誤った情報に関するポリシーを拡大しています。

YouTubeはどうやって違反対象になる動画を見つけている?

出典:Google 透明性レポート 2022年1~3月のデータ

現在、20億人の月間ログインユーザーがいるYouTube。これは今の世界の人口から計算すると、4人に1人ほどの割合です。

また、投稿される動画は毎分500時間に達するほどで、今この瞬間にも、多種多様なコンテンツがアップロードされていることでしょう。

人間とAIの組み合わせにより、迅速かつ正確に処理

膨大な数の動画を、どのようにして審査しているのか、YouTubeの担当者の話によると…。

人間だけでは処理できない量とスピードで削除できるよう、テクノロジーを導入しています。例えば、AI(人工知能)のような技術です。

AIは、すでに削除されたほかのコンテンツと類似するコンテンツを検知できるので、違反動画の検出ができるようになっています。

こういった自動システムにより、コミュニティガイドラインに違反するコンテンツについて、多くの人が視聴する前に対応することができます。

また、AIでは判断が難しい微妙な文脈や背景のあるコンテンツに関しては、審査チームが対応します。ガイドラインに違反するコンテンツの検出、削除に対し、Google全体で2万人以上の担当者を割り当てています。

YouTubeはコミュニティガイドラインに違反しているコンテンツの迅速な削除はもちろんのこと、視聴者が目にする前に対応することも重要視しています。

削除された動画のうち、33.7%が一度も視聴されることなく削除されました。これは自動システムによる報告を使うことで、実現できているそうです。

出典:Google 透明性レポート 2022年1~3月のデータ

多くの動画が視聴される前に対応されているのは驚きですね。YouTubeが悪質なコンテンツからユーザーを守っているのが分かります。

国別でどのくらいの数の動画が削除されているのか見てみた

世界100か国以上で利用されているYouTube。それぞれの国ごとで、削除される動画の数がどのくらい違うのかデータをまとめました。

順位国と地域削除された動画の数
インド117万5859
アメリカ合衆国35万8134
インドネシア22万2471
ブラジル21万1580
ロシア20万2743
パキスタン12万4457
バングラデシュ9万3784
メキシコ7万7139
ベトナム7万2875
10タイ7万1805
11ドイツ5万8971
12トルコ5万6778
13フィリピン5万3041
14イギリス4万9256
15ウクライナ4万9026
16モロッコ4万6835
17アルゼンチン3万9105
18フランス3万2054
19イラク3万783
20サウジアラビア2万9640
21カナダ2万8247
22コロンビア2万8230
23マレーシア2万7067
24韓国2万6860
25スペイン2万6114
26エジプト2万5910
27日本2万3000
28ポーランド2万1642
29ペルー2万1625
30ナイジェリア2万1260

出典:Google 透明性レポート 2022年1~3月の上位30か国のデータ
※国と地域は動画がアップロードされた時点のIPアドレスにもとづく

削除された動画の数でいうと日本は27位。他国と大きな差を付けてインドが1位ですが、これはYouTubeというプラットフォームをどれだけ活用しているかの裏返しではないでしょうか。

YouTubeは過去数年にわたって、インドのデジタルトランスフォーメーションを支援したり、女性のオンライン参加を手助けしたり、さまざまなアプローチをしています。

その結果、学習機会の少ない地区の人でも専門的な知識が得られやすくなったことを始め、動物の育て方、道具の修理方法など、生活に密接する情報を知りやすくなりました。

また、YouTubeが提供する動画を使ったECアプリ『simsim』は、ヒンディー語、タミル語、ベンガル語という現地語で利用できるため、オンラインでの買い物が増えるきっかけを作っています。

こうした動きによって、インドではさまざまなコンテンツが生まれるようになりました。普及率が爆発的に増えているからこそ、削除されるコンテンツも多いのでしょう。

YouTubeはどうしてBANをするの?

YouTubeにはいわば、YouTube上での交通ルールのような、コミュニティガイドラインが設けられています。これは、動画のみならずコメントにも適用されるもので、YouTubeを安心、安全に利用するための指針です。

コミュニティガイドラインのポリシーや、利用規約に違反すると判断された場合には、動画が削除されたり、チャンネルが停止されることがあります。詳しくはYouTubeの『コミュニティ ガイドライン』と『利用規約』をご確認ください。

BANの基準ともいえるガイドラインや利用規約は、どのような考え方がもとになっているのでしょうか。

YouTubeの担当者から、ある価値観について話が聞けました。

YouTubeの価値観は自由、そして自由に伴う責任

YouTubeは開設当初から『表現する場所をあらゆる人に提供し、その声を世界中に届ける』を使命とし、自由で開かれた場所であることを守ってきました。

そして、オープンプラットフォームを目指す中で大切にしてきたのが、『4つの自由』という価値観です。

ただ、自由だからといって、無法地帯でいいわけではありません。

自由で開かれた場所であるYouTubeを保つためには、責任の伴った行動が必要だと考え、『4つの責任(Responsibility)』を定めています。

『4つの自由』とは?

・表現の自由。

・情報にアクセスする自由。

・機会を得る自由。

・参加する自由。

『4つの責任』とは?

・コンテンツを削除する(Remove)。

・信頼できる情報源を見つけやすくする(Raise)。

・有害な誤情報とガイドラインのボーダーライン上のコンテンツの拡散を減らす(Reduce)。

・信頼できるクリエイターに還元する(Reward)。

自由と責任のバランスを重視

YouTubeにとって、自由と責任はとても大切な考え方です。

すべての人が自由に発言し、表現できる機会を得ること。オープンな情報に簡単にアクセスでき、国境を越えて同じ関心や情熱を持つコミュニティを見つけられるように引き続きしていきたいと考えています。

そして、YouTubeのコミュニティガイドラインに違反するコンテンツを削除したり、信頼できる情報源のコンテンツを見つけやすくしたり、誤情報と判断されるコンテンツは表示させないようにしたり、利用する人の安心や安全を守っています。

また、当然のことですが、クリエイターの存在がなければYouTubeは成立しません。

コンテンツを通して世界中の人々に発見、学び、楽しみを届けているクリエイターには、収益という形でクリエイティブに対して還元しています。

これが、YouTubeが約束している『4つの自由』と『4つの責任』です。

誰もが動画を投稿し、世界中の人々と共有できる、オープンプラットフォームのYouTube。

自由であることで、素晴らしいチャンスを生み出しているのは間違いありません。ですが同時に、課題も伴うのは避けられないことでしょう。

YouTubeは、表現の自由を守る使命と、有害なコンテンツからコミュニティを守る責任の、両方をバランスよく保つように取り組んでいます。

そして、YouTubeの担当者は「自由と責任のバランスに関して、私たち一人ひとりの意識も大切」であるといいます。

YouTubeは関わるすべての人々と一緒に作っていく場所

YouTubeが、あらゆる表現をする場所であり続けるために、私たちは、YouTubeに関わるすべての人々と一緒に、YouTubeを作っていきたいと考えています。

ですから、もし、不快に思ったり不適切に感じたりするコンテンツがあった時は、「これはダメ」という気持ちをYouTube側に伝えられる、『報告』をしてください。

『報告』は匿名ででき、身元が公開されることはなく、回数制限などもありません。

基本的には動画の周りにある『・・・』などのメニューを押していただければ、旗のマークの付いた『報告』ボタンを見つけていただくことができると思います。

『報告』があった後は、AIが検証し、判断が難しい場合は審査チームが確認する仕組みができあがっているので、ぜひ、活用いただければと思います。

※四角い赤枠で囲まれた部分から『報告』できます

YouTubeというプラットフォームのために、私たちができること

BANはYouTubeという自由で開かれた場所を保っていくために必要な取り組みの1つです。

それは、YouTubeを利用するすべての人の安心や安全のためです。

私たち一人ひとりが『4つの自由』『4つの責任』をより意識していければ、今以上にコミュニティが守られ、クリエイターや視聴者が輝ける場所であり続けられるに違いありません。

YouTubeはこれからも、次世代のクリエイターに力を与え続け、世界中の人々の人生をより豊かにしてくれそうですね。


[文・構成/GLUGLU編集部]

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